- まず、ABテストとは?
例えば、WEBページに設置するバナーのクリック数を上げたい時、左側に設置するのが良いのか右側に設置するのが良いのか悩むことがあります。この悩みを解決するために、どっちのバナーが良いのかを検証することをABテストと呼びます。詳しくは、「A/Bテスト(英: A/B testing)とは、主にインターネットマーケティングで行われる、施策判断のための試験の総称である。」をご参照。
- 優劣を正しく判断するために統計を使う必要がある
左側に設置するAバナー、右側に設置するBバナーがあるとき、それぞれのクリック数の平均値で比較することもできます。ただ、単純な平均値の比較だと、どちらも本当の効果は同じにも関わらず、偶然的に生じた平均値の違いで優劣を判断してしまう場合があります。そこで、統計をうまく使い、優劣を正しく判断することが求められます。
- 二項分布を仮定すると期待値、分散、標準偏差を簡単に計算できる
統計的に優劣を判断するには、一般的に期待値や分散、標準偏差を求める必要がありますが通常手計算では求めることが難しいです。ただ、二項分布を仮定すると、簡単に分散等を計算することが可能です。ちなみに、二項分布は、結果が成功か失敗のいずれかである n 回の独立な試行を行ったときの成功数で表される離散確率分布です。そして、二項分布の期待値と分散は定義により容易に求めることができます。例えば、nを試行回数、pを成功確率とするとき、期待値はnp、分散はnp(1-p)、標準偏差は√np(1-p)となります。
- 実際に二項分布を仮定して期待値、分散、標準偏差を計算
実際に計算してみます。AバナーとBバナーがあるとします。何れもN=100,000です。クリック率は、Aバナー:Pa=0.001、Bバナー:Pb=0.0011です。ここで、A{N, Pa}とB{N, Pb}は何れも二項分布に従うと仮定します。期待値は、Aバナー:Ea=NPa=100、Bバナー:Eb=NPb=110です。分散は、Aバナー:Va=NPa(1-Pa))=99.9、Bバナー:Vb=NPb(1-Pb))≈109.9,です。標準偏差は、Aバナー:Sa=√NPa(1-Pa)≈10.0、Bバナー:Sb=√NPb(1-Pb)≈10.5です。
- 仮説検定をおこなう
上記で計算したところ、Ea>Ebとなり、Aバナーの期待値が大きいことが分かりました。しかし、これは偶然の結果であり、AバナーとBバナーの間には本質的な違いはないかもしれません。そこで、仮説検定をおこないます。今回は、AバナーとBバナーは同等であるという帰無仮説を設定します。ここで、Bバナーがクリックされた回数、すなわち期待値Ebが二項分布(と仮定する)A{N, Pa}に従うとするとき、ラプラスの定理により(Eb-Ea)/(Sa)は近似的に標準正規分布に従うことを導けます。これを用いて計算すると、(Eb-Ea)/(Sa))≈1.0になります。標準正規分布の95%信頼区間は、-1.96~1.96なので1.0はその範囲内に入ります。そのため、帰無仮説を棄却できない、すなわち、本質的に違いがないことを否定できません。つまり、期待値で見ればEa>Ebですが、統計的な差はないと言えます。
- 統計的に差がないことが分かったら
残念。と落胆する必要はありません。今回の結果、バナーを左側に設置するか右側に設置するかでは、何れも効果が同じであるという事実が分かりました。そのため、この事実を活かした施策が提案可能になります。また、設置場所によって効果の差がでないことが分かったので、今後、左右のバナーでクリック率等の違いが出た際は、他の要因、例えば、バナーのクリエイティブで差が出たと推定することが可能です。
- 組み合わせの問題
今回は、組み合わせによる問題は考慮していません。つまり、本来は左側の方がクリック率が高いにも関わらず、右側でクリック率が高まるクリエイティブを選んでしまい実験した結果、それが丁度良い具合に補正されて、偶然にも左右同等の結果になってしまった可能性があるということです。このような問題を回避するには、単一のクリエイティブの影響を小さくするために複数のクリエイティブで実験する等の対策をおこなう必要があると考えられます。
参考サイト
参考サイト
0 件のコメント :
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。